2019年12月15日日曜日

学生フォーミュラを愉しむ



皆様お疲れ様ですYSNです。


この記事はは学生フォーミュラの現役学生、OB、審査委員などの関係者によって12/1から25日まで一日一記事づつリレーしていくアドベントカレンダーです。
前回の記事はりくるーとのわかるようでわからない計測のはなし
でした。

今回は「学生フォーミュラを愉しむ」という題材で書いていこうと思います。

「設計で忙しくて全然たのしめてねぇわ!」って人も生き抜きに読んでみてくださいな。

この話のキーワードは目的意識自主性チーム愉しむです。

■人生を愉しむ為に学生フォーミュラを愉しむ

 突然何を言い出すのかと思う人もいるかと思いますが、現役の学生フォーミュラ勢に一番伝えたいことはこれなのです。
 自分の歩む人生を自分で決め、納得感のある人生にするための力を学生フォーミュラを愉しみながら身につける。そんな意味合いです。
 自分の歩む人生を自分で決め、納得感のある人生にするためのとは、
  1,対処すべき課題を見極めてそれを解決し、新しい価値を創造する力
  2,自分を正しく見つめ直し、進むべきと思った道へチャレンジする力
の大きく分けて二つのことを指します。
 1はどんな業界に行っても必要とされる力なので、これを磨き上げればどんな仕事でも任せられる人財になる。逆に言えばどこからも欲しがられるので、仕事を選べる立場になれるわけです。
 2は「そもそも自分ってどんな条件がクリアされれば納得感のある人生になるのか?」という自分のありたい姿を見つけ出さなければ納得感のある人生にはならない。そしてそれを実現するために積極的に動かなければ何も変わらない。だからこの力が重要なんですね。
 学生フォーミュラを愉しむという方に話を戻しましょう。
 そもそもさっきから楽しむじゃなくて愉しむって書いてるけどなんなんだ!って思う人もいるかと思いますが、ちゃんと訳があって使い分けてます。
 「楽しい」とは単純に遊んで楽しいとかそういう類です。
 「愉しい」とは、もう少し心の底から「良いなぁこれ」ってなるようなことを言っています。例えば「自分の成長を実感する」とか「目標を達成する」とか「良いチームプレーを発揮する」とか。そして、大半の人間は目的が達成されたときやそこへ近づいていることを実感したときに愉しいと感じるのです。
 何となく話が見えてきましたかね?「自分の歩む人生を自分で決め、納得感のある人生にするための力を身につけること」を目的として、学生フォーミュラを通してそれを達成していけば愉しくなるってことです。そしてこれを実現する上で最も重要なのは、何の為に、何を得るために活動に参加するのかという目的意識と自らそれらを獲りに行く自主性、必要な壁を越えていくメンタル、そしてチームです。

■学生フォーミュラで身につく力

 目的意識を明確に持つために、学生フォーミュラで得られる物って何があるのか?について触れていこうと思います。もちろんここで書くことがすべてではないですが、自身の経験上大事だなと思ったことを中心に書いていきます。
 まずおさらいですが、自分の歩む人生を自分で決め、納得感のある人生にするためのとは、
  1,対処すべき課題を見極めてそれを解決し、新しい価値を創造する力
  2,自分を正しく見つめ直し、進むべきと思った道へチャレンジする力
の大きく分けて二つだといいましたね?
 これらを分解していくと、課題対応力、価値創造力、リフレクション(自分を見つめなおす事)する力、チャレンジする力となります。
 このうちリフレクションする力以外は、意識して学生フォーミュラをやっていれば身につくはずのものです。特に課題対応力とチャレンジする力はめちゃめちゃ鍛えることができます。もちろん真面目にやらなきゃ身につかないですけどね。
 ここで、課題対応力とは?というところをもう少し深堀してみようと思います。
 課題対応力とは、対処すべき課題を明確にして効果的に対処していく力のことです。その為には多くの情報を収集整理して真因課題を判断し、論理的に解決策を考えて、必要に応じてコミュニケーションをとり、チームで解決していくといったことが必要になります。つまり、これらを要素に分解すると、情報収集・整理力、真因を見抜く力、判断力、論理的思考力、コミュニケーション力となります。ここまで分解すれば何となくイメージできるようになってきたかなと思ってます(というかこれ以上深堀していったら読むのつかれるよね)。もし、この辺についてもっと詳しく聞きたければTwitterでもLINEでも面直でも聞きに来てください。(学FのOBOG忘年会とかチャンスだよ!!)

■目的意識と自主性、チーム

 ここまで読んでみていかがですかね?
 学生フォーミュラでどんな力が得られるのかとその価値について書いみたつもりですが、そろそろ目的を明確にして活動を見直してみようかって気になってきましたかね。
 どんな力も目的意識をもって取組まないと得られないし、自主的に自分の考え方を、環境を変えていかないと何も変わらないんですよね。
 そして、学生フォーミュラがクッソ忙しいことは大体どこも一緒だと思うんですよね。そんな忙しい環境をただ文句を言ってイライラするだけで終わるくらいなら、大変だけど愉しい✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌って思える方が良くないですか?
 その為の鍵になるのって目的意識と自主性を持って取り組む事と、同じ志を持ったチームをつくりあげる事だと思うんですよね。完全に経験談ですけど。
 しかも、そもそも「チーム」って同じ目的をもって行動する集団のことなんですよね。
 合致度はどうあれ共通の目的をもっておくことってチームとして本当に必要な要素なんですよ。それ次第でお互いを潰し合うことも高め合うこともできるんですよ。
 さらに、2011年から学Fを見てきて、生産性の無い文句や愚痴を言ってる”だけ”のところって大体そこがあやふやなんですよね。目的が違うからお互いの意見の意味が分からず無駄な摩擦が生まれてギスギスして…っていう。そんなチーム絶対面白くないじゃないでうすか。
 目的が同じなら無駄な摩擦が全くないかといわれるとそれはコミュニケーション力に依るところも大きいので何とも言えないですが、少なくとも、価値ある衝突や摩擦=切磋琢磨は生まれる。これは実際自分も現役時代に体感したので間違いないです。
 ここまで聞くと、目的の統一感があるチーム(=あるべき姿のあるチーム)とないチーム、どっちがいいかって何となく見えてきません?

■学生フォーミュラを愉しむ為のチームビルディング

 では、チームのあるべき姿をつくる為に何をすべきか?というところに踏み込んでいきましょう。自分がいつも研修でやるのは、
 Step1:各メンバーの目的を明確にする
 Step2:全メンバーの目的を、ニュアンスの微妙な違いまで含めて整理する
 Step3:ディスカッションする
 こんな感じでメンバーがどんな目的を持っているのかを整理し、それらを満たせるようなチームのあるべき姿を決めていきます。
 この最後のディスカッションが本当に難しいんですよね。ポイントとしては、曖昧な言葉の定義を明確にする事と、頭ごなしに否定しない事、腹を割って話す事。特に腹を割って話すのはとても大事。意見をちゃんと出さずにいて、決まってからウダウダ言われると話し合いの時間の意味がなくなるし、全員の納得感のある結論に至らない。納得してない目的なんてあってもやっぱり無駄な軋轢を生む要因となってしまって意味がない。
 もう一つ、難しさとしてあるのが目的を統一できないということ。目的は必ずしも一つである必要があるわけではないけども、真逆の意見が出てくることもある。そういう時はうまい折衷案を探るしかないがこれもまた非常に難しい。
 しかし、チームのあるべき姿が明確になれば現状とのギャップからやらなければならないことが明確になり、モチベーションアップにもつながる等メリットもたくさんあるので、ぜひトライしてみてほしい。
 超個人的な意見を言うと、そもそも学生フォーミュラって優秀な人財を社会に送り出す為の教育プログラムなわけだから、優秀な人財として必要な能力を身につける事ができるチームにしていくことがあるべき姿なんじゃないの?とは思う。じゃ優秀な人財ってなんだ?って考えると対処すべき課題を見極めてそれを解決し、新しい価値を創造する力を有している人のことなわけで。そしてその中でも特に課題対応についての必要な能力を身につける機会が学生フォーミュラにはたくさん転がっている。そして課題対応力のすべてのベースとなるのは論理的思考力なので、「論理的な根拠を明確にもって行動するチーム」があるべき姿なのかなって。唯一無二の答えだって言ってるわけじゃないからね!あくまで例として。

■チーム改革の話
 
  思想的な話ばっかりでつまらんと思うので、現役時代の話をしておこうかなと。
 内容は入部してから「チームを変えてやろう」と思い実行していくまでの話です。
 まず、「チームを変えてやろう」と思ったキッカケから。
 自分が入部したときのチームは、発言すべき場でちゃんと意見を言わないクセに後から裏でグチグチ文句を言うギスギスしたチームで、設計に関しても「よくわからないからとりあえずこのままで」か、「特に根拠はないけど何となく形変えるわ」みたいなことが当然のように行われているチームでした。
 そこで思ったのが、「そんなんチームでも無ければ設計でもないじゃん!!」ってことです。なぜよくわからんものを嫌々造って人を乗せて、壊れたり性能でなくてつらい思いをしているのか?到底理解できませんでした。
 そこで、せめて自分の担当した部品だけはちゃんと明確な根拠をもって設計してやろうと思い始めて吸気のCFDを死ぬほどやり込みました。終電で帰って始発で来る。寝る時間は計算待ちの間だけ。移動時間はエンジンや吸排気系の勉強をひたすらする。そんな生活を半年くらい続けるくらいに。(余談だけど、CFDと実機のコリレーション取ってなかったから結局自信をもってこうだ!っていえるところまでは至らなかったんですけどね)
 そんなことを思いながら迎えた大会で事件が起こります。
 2012年大会のアクセラ一本目終了直後のエンジンブローです。たまたま運悪くそのタイミングで壊してしまったなら仕方ないと思えたのですが、一つ重大な問題がありました。それは、エンジンが壊れることが予見できていたのです。
 大会前のモテギ試走会の後、エンジンから今までに無い音が聞こえ始めました。以前にも似たような音を聞いた後、カムシャフトが焼き付くという経験をしていたので、自分は”これは大会中の高負荷でぶっ壊れるな”と思ったわけです。
 しかしそれを先輩に進言しても、「デザインボード作ってて忙しいから」「エンジン載せ替えたら電装が壊れるかもしれないから」などと言って取り合ってもらえず、終いには逆切れされる始末。「せめて、予備のエンジンを持っていこう」といっても「予備エンジンを積むスペースはない」の一点張り。(結局大会中にYNFP様から借りたエンジンと、大学から急遽持ち込んだエンジンの3基を持って帰ってきたんですねよね)
 そして大会中に案の定ブロー。完全に上級生の判断ミスだったと今でも思ってます。
 そこで気づきました。「チームを変えなければ満足のいく活動にはならない」と。
 大会後、自分なりにこのマネジメントミスを起こした要因を考えた結果、「メンバーが腹を割って話せていない」「チームとして目指す先が統一されていないから無駄な摩擦が生まれ意見が出なくなっている」という結論に至りました。(課題形成ですね)
 ではこの課題を解決するためにどうするか?ちょうどこの大会後からリーダーの代になることもあって、「チームの目指す先を統一しよう」と考えて、統一しやすい目標として「勝ちを目指すチームにしよう」ということと、「ロードマップを立てて計画的に知見を増やして強いチームにしよう」という提案をしました。
 この提案は一旦は受け入れられたのですが、現状に慣れきってしまいモチベーションも無くしてしまったメンバー達は現状を変えていこうとはなかなかならず、誰からも協力を得られませんでした。(立ち回り方も悪かったと今は反省してる)
 そして自分がリーダーとして迎えた代が終わったころに気づいたのです。「意識が固まってしまったメンバーを変えるのは難易度が高すぎる」ということに。
 ではどうするか?意識がまた固まっておらず、モチベーションを高く持っている新入生の内に意識づくりをしようとなったわけです。
 そんな時入ってきたのがSHIBA-4が総合2位を獲得したときに4年生として入ってきた代です。
 彼らに何をしたのか?基本的には目的意識の統一と腹を割って話す環境づくり、モチベーション維持の為に発破をかけるといったことです。
 当時は競技である以上誰しもが望むであろう、”勝つこと”目的として据え、その為に今何をするか?を考えさせました。(今としてはこちらから誘導しすぎた事と勝ち方まで統一しなかった為に自分の思っていた姿とは若干ズレた事を反省している)
 これが功を奏したのか彼らは火が付いたように活動に取り組むようになり、今までの新入生に対する不満は減りました。
 そこから次の代、次の代と同じようなことをして、チームとしての目的にある程度芯が通ってきた結果、あの順位に結びついたのかなと思います。もちろん彼ら自身の頑張りが一番効いてますけどね。
 自分がチームを変えていった流れはこんな感じです。この間にもちろん研修を変えた後の代との衝突はたくさんありました。
 特に某ドライバーとは面と向かってもLine上でも、Twitterでもバチバチにやり合ってたと思います。しかし目的は同じなので、お互いの気づきや成長につながり、仲が悪くなるということは無かったです。もちろんほかのメンバーともそうです。パワトレを主導したK君とは面と向かってだけだったので外の人はあまり知らないと思いますが。
 そんな経験をして、これこそ切磋琢磨だな!と実感しましたし、6年間の学生フォーミュラは愉しかった!と思って終えることができました。
 とはいえ、思い通りにならなかったことがあります。それは、自分のやってきたチームビルディングが引き継がれなかった事、定性的に速いマシンをセンスで造り上げることはできるようになったが、定量的に速いマシンを目指すところには至れなかったことです。
 定量的に速いマシンを造ろうと思ったら膨大な知見が必要です。そしてそれは何年もかけて積み上げていかなければたどり着けない領域だとも思っています。

■出力特性について

 急に技術的な話になりますが、こんな話もしておいた方がいいかな?と思ったので。
 これは自分もやりきれなかったところなので答えがあるわけじゃないのですが、もし今の現役勢で自分のいっていることが理解できて、もうその領域は超えたよ!って人がいたらぜひ話を聞かせてほしい。探求欲求が満たされなくてムラムラしてるので。
 まずVプロセスでコンセプトから車両目標に落とし込んで、システム目標に割り当てますよね。その時の出力特性目標ってどうしてます?
 自分が現役の時の結論は低回転のトルクはたくさんあったところで、タイヤで使い切れなったら意味ないから、その分を高回転のパワーにまわせば効率上がるやんてことです。
 そこで、開度毎のトルク特性マップを作ったうえで走行ログとドライバーコメントを組み合わせて、ドライバーが加速しようと思った時、どれだけアクセルを開けてタイヤにトルクを伝えているか?に着目しました。
 その結果、例えば4発の5~6000rpmあたりのトルクってそんなに使ってないし、それより下はもっと使ってないってことに気づいたんですよね。
 だったらその分上でパワー出した方が良くない?とくに4発なんてもっと上で使うこと前提のエンジンだしって思って自分なりに目標出力特性線を引くところまではやったんですよね。
 この時の線は、実際に使っていたトルクをアクセル開度80%くらいで達成できる事という前提で引きました。しかしこれを実現するまでにはいたらなったので、その先を見た人は是非どうだったか教えて欲しい!っていう話でした笑

■最後に

 やっぱり学生フォーミュラって時間は取られるし忙しくてイライラしやすいしそのせいでメンバーと衝突したりするしでめちゃくちゃ大変なんですよね。
 でもその大変な中で、最大限自分を成長させて自分のありたい姿を達成していくためには越えていかなければならない壁がある。その壁を越えていくためにもチーム環境ってすごく大事だと思うんですよね。
 ちゃんと目的をもって定量的にマシンを造り、長期的に成長を続けられたチームは得られる知識レベルも思考レベルも段違いに高くなると思います。
 そんなチームが国内で増えていってくれれば、自動車業界、モノづくり業界の未来は明るいのかなと思ってます。

以上、長すぎるわ!と思った人もいると思いますが、これでもまだ伝えたい事の半分くらいしかかけてないです笑
文才が欲しいですね。

こんな話を招待してくれたチームではしているので、興味あれば声かけてください。
金銭的に行ける所ならどこでも行きますよ!

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